IPO のために必要な 16 のこと(あるいは本当に強いビジネスを作る方法) (Nicole Irvin)

 

自社を上場会社にするべきでしょうか? どうしてでしょう? もしすべきなら、いつ、どのように? 本記事では、これらの質問に答えるためのフレームワークを提供し、これらの疑問を解明します。

もし、シードステージから始まり、成長期へと続く企業の成長を、人の成長の軌跡に例えるならば、新規株式公開 (IPO) を行うことは運転免許を取るようなものです。株式公開により、財務規律から情報開示、企画立案や実行、戦略的方向性に至るまで、企業の説明責任に対する基準はさらに高くなります。Mark Zuckerberg はこう述べています。Facebookは株式公開後、より高い基準を保っているからこそ、携帯電話への活用が速やかに行われ、それによってより強固な将来を築くことができた、と。

次世代の大規模なフランチャイズを含む、最も有力な企業は、今後、最終的に上場会社となるでしょう。何十年と続くテクノロジー分野のフランチャイズ企業で株式が非公開のものを挙げてみてください。そんなに難しくないはずです... なぜならとても少数ですから。株式の公開により、さらなる利点が生まれます: 従業員や投資家に流動資産を提供するうえ、他企業の獲得に必要なM&Aの通貨を供給し、維持が難しい顧客を獲得するための信頼性を確保し、民間資本に問題が生じた場合の確固たる資本を提供します。IPOの準備を整えることにより、事実、創業者にさらなる選択肢を与え、会社の未来は制御しやすくなります。

しかし、いつ株式を公開すべきなのでしょう? 答えは簡単です: 準備が整った時がその時です。その上、IPOを行うべきか行わざるべきか、というのは適切な問いではありません。問うべきは、どのように準備を整え、確実に事業を「機能」させるのか、です。私は投資銀行家として、特にテクノロジー企業を上場会社化するために何年にも渡り尽力してきました。その経験を踏まえて、一般投資家たちが「機能している」と判断する際に何を見るか、との視点から、以下のリストを共有したいと思います。これを、IPOを目指す企業に対する、一般投資家のウィッシュリストとでも考えてください。そして目的に関わらず、これは頑健で長く続く事業を作り上げ、その時が来たら上場会社化するためのチェックリストでもあります。

IPOの準備を整えることにより、事実、創業者にさらなる選択肢を与え、会社の未来は制御しやすくなります。

#1 成長

まず第一に、一般投資家は、強固で健全、盛況な事業の兆候を探します — そして、成長率はその最も分かりやすい指標となります。IPOに至るまでの収益成長率や、IPO時の実質評価額も、投資家たちの間では重要視されています。実際に、テクノロジー企業の評価額は、その他の財務指標よりも、収益成長率と強く相関しています。例えば、McKinseyは、「成長率の変化は、倍の評価益をもたらし、それにより改良の余地を設けることができる」ことを見つけました

高い成長率は、以下の事柄のうちのいずれか、もしくは複数を示しています: (1) 新規顧客が製品を購入している; (2) 既存顧客がさらに/追加で製品を購入している; (3) 既存顧客のチャーンが新規顧客の成長より著しく小さい。それはまた、合理的な収益化モデルが存在していることの証拠でもあります。

例えばユーザー数、購読者数、予約数、売上高、流通総額 (GMV) などのその他のメトリクスも、事業の成長率を裏付ける証拠となります。しかしながら、評価のために複数の指標を選ぶことになると、一般投資家は事業の勢いを見るために収益成長率を重視します。また、収益成長率は、各企業のビジネスモデルにより定められた、一般に認められた会計原則 (GAAP) に則って定義、制定された「一貫した定義」を持ちます。そして、この指標は、成長率の指標のうち唯一、独立会計士の手により確認、認定がなされるものでもあります。

真のリーダーを有する企業を見つけるために、テクノロジー分野の一般投資家は、IPO後の2年間の見込み収益成長率が30%以上の企業を好みます。これは、この水準以上に収益が増加し続ける企業は、標的とする巨大市場で、その競合企業よりも成功する可能性が高いためです。

それでも、事業における相対的な投資の経緯により、この数字は変わり得ます。例えば、成長志向の投資家を期待するような企業は、早めに上場会社化するかもしれません。なぜなら、これらの投資家は、企業の歴史の中で、上昇傾向の時期に参画することを好み、公開市場に移行するまで長く待ちすぎた場合、これらの一般投資家が成長を楽しむ機会を奪ってしまうかもしれないからです。一方、その他の企業には、長く待つだけの妥当な理由があるかもしれません。最終的に、創業者は、自らの事業を首尾よく経営するために、無理のない収益成長予測を決定する必要があります。

#2 スケールする収益

上場会社化を目指す企業は、成長、しかも急速に成長していく可能性を示す必要がある上に、規模を拡大して成長していく可能性を示す必要があります。これは、大半の人々の考えの中で、大数の法則のようなものになっています。「高い成長率を示すのは、数字が小さなときも大きなときの方がはるかに難しい」。そのため、企業が急成長をしており、高い収益を上げている場合、その成長は偶発的な出来事や一次的なブームではなく、この先維持されることが見込まれます。

しかし、「スケール」というのは、過度に使われる言葉でもあります。ここで言うスケールとは、正確には何を意味しているのでしょうか? 一般投資家にとって、経験則としてのスケールとは1億ドル前後の収益を表します。もちろん、そこには例外も存在します。この数字は、明確な線引きというよりは望ましい基準値であると言えます。収益が10億ドルに達するまでの歳月では、この辺りの数字が投資家にある種の安堵感を与えます。

しかし待ってください… 収益が10億ドルとはかなりの高額です! そして、企業がその経過点を通過するまでに時がかかろうと構いません。一般投資家は、IPOを目指す企業が収益10億ドルに至るまでの見通しを持っているかどうかを知りたいだけなのです。なぜなら、それにより、創業者が持続可能で頑健な収益成長のための未来像とプランを持っていることが明白だとわかるからです。過去の格言でよく耳にするように、過去の業績が将来の成功を保証する訳ではないですが、その一方、一般投資家は、過去の成功は少なくとも将来の成功の指標となる、と捉えています。

結局のところ、テクノロジー分野の公開市場の投資家たちは、この様な軌跡を望んでいます。なぜならそれは、株価急騰の、そして真に長続きする企業の目印となるからです。最後に、収益10億ドル規模の急速に成長を遂げる企業を率いていくには、真の意味で経営手腕が問われます。そのため、一般投資家たちは、収益10億ドルに向かって事業が成長し続けるために必要な手腕を経営陣がすでに整えていると考えていることが多いでしょう。

#3 キャッシュ

さて、ここで皮肉が生まれます: レジリエンスのある資本を手にすることが (その他の要因に加えて)、多くの企業が新規株式公開を行う大きな理由となります。しかし、IPOを行うにあたって「最悪」の時期が、事業に資金を供給し続けるために、お金を本当に欲している時だというのです! この矛盾にどう折り合いをつければ良いのでしょう?

基本的に、一般投資家は、損益のない事業経営のために必要なキャッシュを貸借対照表上保有しているか、もしくはまもなく創出できるか、を確認したいと思っています。もし業績予測や事業計画に、IPOにより生じる不足分が想定される場合、一般投資家たちは、自立した事業を築くだけの計画を経営陣が有していないと捉え、好ましく思わないでしょう。理想的には、IPOによる収益により、さらなる収益成長率のための資金となるための蓄えが生じ、すでに好調な貸借対照表をさらに強化できることが望ましいです。

タイミングを見計らったIPOは、単なる資金集めのイベントで終わるのではなく、資本政策表をさらに進化させるためのものであるべきです。望ましくないことは、公開後、資本市場に戻らざるを得なくなる場合です。そして、本記事の初めに概説した理由により、キャッシュフローがプラスでキャッシュを必要としていない時に株式を公開する事業が山ほどある事実を心に留めておいてください。

#4 利益

非上場会社と上場会社との最も大きな違いは、どれほど (以前にも増して) 真剣に利益を追求するか、という点ではないでしょうか。全ての企業は、いずれ自らのビジネスモデルが成熟期に達した際、損益利益書上で純利益 (そしてフリーキャッシュフロー) が生じることを期待しています。しかし、その早期段階で、IPOを目指して躍進するテクノロジー企業の多くが、成熟期に得るであろうものと同額の利益を生み出してはいません。

利益の評価方法は、事業の種類やその成熟度愛により大きく異なります。IPO投資家は、以下の事柄に注目します:

  • フリーキャッシュフロー:サブスクリプションに基づく収益モデルを有する、ソフトウェアやインターネット事業に対してはフリーキャッシュフローに;
  • 純利益:サブスクリプションに基づく収益モデルを有さない、ハードウェア、半導体、伝統的ネットワーキング、インターネット事業に対しては純利益に; そして、
  • EBITDA: 資産に重きをおく事業など、貸借対照表に借り入れがあるかもしれない事業に対してはキャッシュフローの代わりとしてのEBITDA

しかしながら、いずれの指標であろうと、投資家たちは近い将来に利益を生じるまでの明確な道程をみたいと考えています。サブスクリプションに基づくソフトウェアやインターネット企業に関しては、今日の一般投資家たちは、理想的にはIPOから1年以内にキャッシュフローが損益のない状態に落ち着くのを見たがりますが、6〜8四半期の範囲内であれば安心します。利益の指標として純利益に注目する分野やビジネスモデルの場合、一般投資家たちはもっと早い段階で純利益の創出を確認したがり、そのために、見通しの中で増益の伸びに着目します。

市場の状態の変動により、この道程から利益へと転じるタイミングが影響を受ける可能性があることに注意をする必要があります。2016年前期のように、もっと「リスクオフ」な市場環境では、投資家たちはIPOから明確なキャッシュフローが生まれるまでの間がさらに短期間になることを好みます。2012年、2013年のIPO市場と同様な、もっと「リスクオン」な市場環境では、投資家たちは利益までの道程が長くても寛容かもしれません。

サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 分野の事業も、大目にみてはもらえません。いくつかのSaaS企業は、非上場会社か上場会社かによって、収益に関して異なる考え方をしているかもしれません [この点に関しては、a16z Podcastの本エピソードで詳しく述べています]。しかし、来たるべき会計法の改正は、先行投資型のマーケティングと販売費、そして実際にサービスを提供する期間に関する、SaaSの本質的なミスマッチを考慮に入れており、いずれにせよ、これらの企業のほとんどが未だフリーキャッシュフローを根拠に評価されています (ただ、その他の会計問題の犠牲とならないよう調整されています)。そのため、IPOを目指すSaaS事業でさえ、ブレイクイーブンのキャッシュフローを2年で行えることを示すことは重要です。また、コホート分析のように、これらの事業の健全度合いを示す助けとなるようなその他の主要な指標も存在します。

#5 市場規模

明らかに、一般投資家たちは大きな市場機会を持つ企業への投資を好みます。そのため、彼らは広く開かれ、巨大なポテンシャルを持った市場規模 (total addressable market; TAM) である兆候を見極めようとします。広いTAMは、市場への浸透度が高くなくとも、企業がいずれ広くフランチャイズを展開する可能性が理論上あることを意味します。大きい市場規模も、高い長期成長率を可能にします。

しかし、市場機会の規模を定量化することは難しいことです。TAMは単なる理論上の数値であってはなりません。一般投資家にとって、その数値は信頼がおけ、証明されたものでなくてはなりません。新規企業がすでに確立された市場を混乱させている場合に、市場規模を算出する古典的な方法は、古参企業の現存する収益を評価することです。第三者による研究報告で、確立された市場の規模を導き出すのにこの方法論を用いています。しかしながら、比較的新しく、確立されていない市場では、第三者の研究報告 (委託の有無は別にして) により、詳細なボトムアップおよびトップダウン分析と共に、TAMが実証されています。[ここで、市場規模に関してのボトムアップ分析とトップダウン分析の違いについての詳細を述べます。]

財務結果もまた、企業が巨大な標的とする市場を持つという根拠となります。例えば、拡大しながらの強固な成長は、市場規模のよい指標となります。

#6 競合勢力図

TAMの評価、およびIPOの機会全体に関する重要な側面として、企業を取り巻く競合勢力図があります。競合相手は誰か — 直接的か、間接的か、隣接しているのか、スタックの上下は?

結局のところ、投資家は勝者を選びたがります。市場が競合相手でひしめきあっている場合、参入のための障壁は低くなっていることを表し、一般投資家にとって将来を見越した上で確信を持って一つの企業に絞ることはさらに難しくなります。そういった理由により、非常に断片化された競合勢力図を持つ産業では、評価額は低い傾向にあるのです。これらの企業が、顧客を巡って常に僅差で抜きつ抜かれつしており、明確な勝者を選ぶのは難しいのです。

競合相手でひしめき合うターゲット市場は、よって一般投資家にとって (アナリストが言うところの) あまり魅力的でない「事例」なのです。—そう、企業がこれらの競合相手に比べて明確な違いを打ち出さない限りは。例えば、もし企業が参入障壁や防御が容易な壕 (強固なネットワーク効果のような) を築くことができれば、大変魅力的でしょう。もしくは、明確な競合相手のいない市場を築くことも有効です。既存市場において、一般投資家は、その分野における支配力を持つ確立している事業者から、体系的に顧客を奪うことができる企業を支持します (WorkdayとOracleの戦いを思い浮かべてみてください)。

#7 製品

明白に思えるかもしれませんが、公開市場の投資家は、投資する企業が一発屋でないことを確かめたいと考えている事実を、ここで再度強調する価値はあります。彼らが次の世代の巨大なフランチャイズを探していることを忘れないでください。だからこそ、市場を牽引する企業は、顧客に売ることができる複数の製品を有しているのです。例え、企業がたった1、2個の基礎をなす製品によりその市場で成功しつつあるとしても、通常その他の製品が、採用されるまで同様の道を経て動いているものです。

顧客対応が必要な企業の多くは、当初単一の製品で上場会社となるかもしれませんが、その後、事業規模の拡大に合わせて、他の製品を開発していきます。Appleや、Facebook (ソーシャルネットワーク)・Amazon (書店)・Netflix (宅配DVD)・Google (サーチエンジン) によるFANG企業のような企業の進化は、その最も典型的な例と言えるでしょう。

企業向けアプリケーション・ソフトウェア企業では、製品展開は「land and expand (先ずは試してもらい、それから売り込む)」モデルを経て行われます。企業はまず、一部顧客を取り込んで足がかりを作り、そこを起点に急速にメインの製品群を展開していきます。この方法により、企業はその分野で地盤を拡大し、競合相手を隔絶し、新規ユーザーの獲得だけでなく既存ユーザーもさらに取り込むことができます。既存顧客による反復的購入はより安価で済む傾向にあるため (a16zパートナーのMark Cranneyがよく言う様に「何かを売るのに最適な場所は既に何かを売ったことがある場所だ」ということです)、増加する販売やマーケティングの投資を抑えることができます。今度はこれらが、企業が言う利幅の拡大や収益性の話をさらに裏付けることとなります。

投資家たちは、理にかなったユニットエコノミクスの証拠を必要としているのです。

#8 ユニットエコノミクス

大成長しているテクノロジー企業の多くは、高い成長率を持つ反面、利幅は低いという特徴を持っています。これらの企業はまだ成熟期に入っていないため、その財務モデルに「定常状態」は存在しません。しかし投資家たちは、事業が成熟したころどのような利幅を持つか、何となく掴んでおきたいものなのです。

それでは、一般投資家たちはどのようにして、その企業が長期的にその利幅に到達できるか、確証を得ているのでしょうか? 単位ベースで表した収益とビジネスモデルのコストを分析することによって —言い換えると、彼らは、理にかなったユニットエコノミクスの証拠を欲しているのです。そして、消費者向けソフトウェア企業の場合、ユニットエコノミクスとは、収益、およびマーケティングキャンペーンなどの企業全体のコストから分けられた単一のユーザーにソフトウェアを提供するためのコストとの分析となるでしょう。ユニットエコノミクスは、事業全体にかかるコストから「核となる」コストを切り離すことができ、そのため長期的な利幅を考える際、適切な代替指標となるのです。

ユニットエコノミクスについて明確に説明するもう一つの方法は、コホート分析 [本文 #10参照] を通してになるでしょう。例えば、ある年にソフトウェアを購入した一連の顧客に関して収益とコストを分析する方法です。いずれの場合でも、単位ベースで達成した利幅は、投資家たちにビジネスが成熟した時点では利幅がどうなるか、感じを掴ませてくれます。

#9 リーダーシップ

一般投資家たちは、よく知り、信頼できると感じるリーダーシップチームのいる企業に投資を行いたいと考えます。時には、この信頼は時間をかけて、企業が一般投資家と会って事業経営やそれまでの成果について彼らの視点から語ることを繰り返すことで、築かれていくものでもあります。もしくは、リーダーシップチームと既存の関係があったり、他社で顕著な業績を積んでいる場合、この信頼はもっと容易に得ることができます。

IPO時やその後、投資家コミュニティーに対する企業の顔として、特にCEOやCFOは、事業を立派に成功へと導くことのできる、信頼に値する資金の番人としての評判を得ている必要があります。しかし、全てのスタートアップのCEOやCFOに実績があるわけではありません。その場合、どのようにして一般投資家は彼らが信頼に値するとわかるのでしょう? ところで、彼らは現在まで事業を経営してきました。企業の過去の財務と実績はどうでしょうか? 彼らはどのように市場を占有してきたのでしょう? どの様な舵取りが彼らをそこまで押し上げたのか、彼らは理解していますか? 企業の将来像について、彼らは明確に説明できているでしょうか? などと続きます。

a16zゼネラルパートナーのJeff Jordan (前任はOpenTableのCEOかつ取締役会長であり、そのIPOを監督していた) が実際、新規株式公開に先駆けて1~2年前から、CEOやCFOが公開市場の投資家たちと会合を持ち始めることを推奨しています。どうしてでしょう? なぜなら、この方法により、互いの関係性を築くことができ、それは信頼へとつながっていくからです。さらにはパフォーマンスの提供により (「去年、君は1億ドルを達成するといったが、その結果は?」といった)、緩やかに実績を築き上げることもできます。

最後に、CEO/CFOのリーダーシップ能力についての決断を行うためには必須ではありませんが、適切な監査役など、IPOを目指す企業にとって早期から関係を築いていく必要のある、その他の種類のパートナーも存在します。

#10 セールスとマーケティング

有力なCEOとCFOの他に、一般投資家たちは、実績のある製品販売部長や営業部長を望んでいます。これは、標的とする顧客のニーズに対応し、成長し続ける収益基盤を産出し続け、新たな機能や製品を先導するための唯一の方法です。

成長する販売力は、製品が潜在顧客に実際に行き渡るのを確実にする最も効果的な方法のひとつです。これは、 (例えば、忠実な草の根ユーザーが基盤となる様な) ウィルス性の「ボトムアップの動き」で事業に参画する製品においても当てはまります。有力なトップダウンの企業向けセールスやgo-to-marketの動きがその場に存在しなければ、競合相手は簡単に入り込み、顧客基盤でトップの最も利益の出る部分をさらっていく可能性があります。

最後に、製品・販売・マーケティングが合わさったエンジンは、投資家の期待に応えるために設定された業績予測ガイダンスにおける重要なインプットを提供しています。これらの目標設定を助ける専門家たちこそが、それらを達成するために尽力する人々であるべきです。

#11 財務運営

企業がIPOを行うかどうかは別として、上記全てを維持するために必要な運営体系は、健全な企業を作る上での鍵となります。しかし、新規株式公開を行う場合、最大限の力を持った財務運営が用意されていることが、特に重要となってきます。

株式公開を行なった企業として、四半期報告の義務を満たすということは、発行人は特定の期間内 —四半期ごとに— 監査済の財務業績を作成し、発行することができなければなりません。これを円滑に行うためには、企業は適切な技術を持つ会計スタッフを有し、財務方針・手順・システムが配備されている必要があります。IPO以前の何回かの四半期に渡って、これらの過程を試しに行い、改善しておく必要があります。これが、企業が財務報告の速さと正確性を上場会社として要求されるレベルまで改善していく唯一の方法です。

更に厳しい財務上のコンプライアンスよるプレッシャーについてのよくある不平として、その重荷が不釣り合いに小規模の発展途上の企業にのしかかっていることが挙げられます。なぜなら、すでに確立している企業は、その全ての過程を行うことができる、大人数のスタッフを有しているからです。一例ではありますが、サーベンス・オクスリー法 (SOX法) が新興企業では滅多に適用されず、Jobs Actが実際にIPO後のSOX法に準拠するまでの年数を伸ばしているとしても、多くのスタートアップにとって、その過程は未だ怖じ気づかせる敷居として立ちはだかります。しかし、a16zの共同創業者のBen Horowitzは、企業のリーダーシップチームが、SOXや同様の水準に準拠するために経営上十分であれば、彼らは概ねその他何をするにも十分である、と述べています。言い換えると、それは責任を持って事業を経営するということに対して、必須の経営業務と仕組みを持ち、高い基準を設定しているということです。[この件にまつわる話は、a16z Podcastの本エピソードで聞くことができます]。

IPOの時期に関わらず、これらを設置しておくことは、企業の利益にもなります。

#12 その他の方針と手順

「単なる維持管理」や経営上の要件に思えるかもしれませんが、正式な人事ポリシー —行動規範、就業規則など— は健全な職場環境以上のものをもたらします。それらは経営陣の価値観や期待を従業員と共有する (そしてその逆も) プレイブックとして機能し、企業の管理と計画を遂行する力に影響します。

その様な人材の運営が確立し、洗練されていくまでに時間を要するため、企業は法律顧問と共に、すぐにでもポリシーの草案作成に取り組むべきです。しかしここでは、ポリシーが存在しているかどうかが重要というわけではありません: ポリシーには新入社員の研修プロセスが織り込まれているでしょうか? もし誰かが聞けば、みんなどこにその書類があるのか分かっているでしょうか? 難しい問題や、企業の規模が拡大していく際の組織文化的問題を扱うノウハウを有する、人事管理が備わっているでしょうか?

この方法でポリシーを運用することで、いかなる成長途上のビジネスにも常に生じうる、潜在的な人事問題や訴訟問題を防ぎ、またそれらに取り組む助けになります。IPOの時期に関わらず、これらを設置しておくことは、企業の利益にもなります。

#13 事前調査問題

引受人や一般投資家の衆目に晒される前に、企業はIPOへの道のりの障害となる様な事柄は何もないか、徹底的に確認する必要があります。一般投資家たちは、これらの「一般投票 (referendum)」における主要問題 —キーとなる経営チームのメンバーのバックグラウンドから大幅なビジネスモデルの転換に伴う規制上の制約まで全ての事柄— が処理されているかを確認したいと考えています。

例えば、もしリーダーシップチームが事実を少しでも偽っていたり、過去に個人的な問題であっても重大な訴訟を起こしていたなどのバックグラウンドを持っている場合、それらが問題となる可能性があります。このような事態を軽減させる最善の方法は、企業自身が主要経営陣や取締役会メンバーのバックグラウンドを前もって調査することです。理想を述べると、これを雇用を決定する前に行うのがベストです。いずれにせよ、問題処理のための時間を設けることがここでのポイントです。

その他の問題としては、企業に対して進行中の、もしくは潜在的な訴訟問題が存在するか、さらには規制上の制約まで含まれます。これらのタイプの問題に対しては、前もって懸念を予測し、法律顧問と共に適切に処理するべく取り組み、端的に説明できるようにしておくことがベストです。準備とコミュニケーションがここでは重要です。

興味深いことに、一般市場の投資家にとって、その他の一般投票問題は、既存の製品の新たな価格モデルの導入や大幅なビジネスモデルの転換も含まれます。一般投資家が躊躇するビジネスモデルの転換は、財務業績の混乱や変動を招くもので、予測性を減じるものである傾向があります。例えば、企業が永続的ライセンスモデル (顧客はソフトウェアのバージョンを一度購入すれば良い) からサブスクリプションモデル (顧客はソフトウェアの経時的サービスの使用料として継続的に支払う必要がある) へ移行する場合などが挙げられます。企業はそのビジネスモデルを適応、進化するべきではなく、してはいけないと述べているわけではありません! ただ、企業は予測可能性とビジネスが管理下にあることを示さねばなりません。

#14 法令遵守

財務上のコンプライアンスと人事に関する上記の事例の他に、認識しておくべき一連の法的な問題が、IPOまでの、そしてIPO後上場会社として即座に稼働するための道程の両方に存在します。

例えば、上場会社であろうと非公開であろうと、アメリカ合衆国外の顧客を有する全ての企業は、外国資産管理局 (OFAC) と連邦海外腐敗行為防止法 (FCPA) に従っていることを確認する必要があります。これは、顧客データベースの入念な調査やその他の注意喚起によって、顧客たちが政府が指定した存在や腐敗した存在と取引を行っていないか確認する作業を伴います。違反した場合は、輸出制限の違反により、罰金や場合によっては首脳部が服役する結果となることもあり得ます。フリーミアムモデルにおいては、ソフトウェアが無料で利用できるため、輸出制限に関してしばしば難しい問題にぶつかります。そしてハードウェアが関わっている場合、企業が直接危険人物に販売したわけでなくても、第三者の転売業者に関する問題が発生してきます。うち幾つかは、表面上はありふれた法律上の細かすぎる問題に思えるかもしれません。しかし、私は実際に、この部分の準備を怠ったばかりに道を踏み外してしまったIPOを見てきました!

IPO後に行う、法令遵守のための取り組みは、証券取引委員会 (SEC) が取り決めた選択的情報開示とインサイダー取引を規制するための規則 (Regulation Fair Disclosure)、通称「レギュレーションFD」が関わっています。その他に加えて、その規則は企業に、重要情報の開示は規定されたチャンネル (例えば、ニュースワイヤでのプレスリリースや企業公式ブログなど) を通して行い、市場参加者に公平なマーケットを提供するよう要求しています。

その他の重要な上場会社に関する事柄の報告と開示についての一般的なセキュリティに関しては、年次報告 (フォーム10-K) および四半期報告 (フォーム10-Q) が含まれます。企業はまた、企業の経営責任者や10%以上の株主に対して、ストックオプションの贈与や行使を含む、所有権に変更があった場合、フォーム4を即座に届け出ることが要求されます。

最後に、ベンチャーキャピタルとのやり取りだけで終わっていた非上場会社と比べ、上場会社では、法人株主や一般的な顧問に関する膨大な法的書類 (例えば、重要な企業の会議や決議に関して代理を立てる際など) が存在します。ここで包括的に説明するには膨大すぎるのですが、要点だけ述べると、企業は公衆の視線の元では、これら法律関係の事柄をさらにうまく取り扱う必要があるということです。適切な報告体制の構築をIPO化の時点で行うのは、良いアイデアとは言えません。なぜなら、企業はそのプロセスが働くか、耐圧試験を行う時間が必要だからです。内部および外部の法律顧問、財務、経営で力を合わせ、IPOの可能性に先駆けてこれら全てを運用可能にすることがベストです。

#15 適切なガバナンス

最後に、上場会社における適切なガバナンスとは、ある一定の基準を満たした取締役会の設置も含まれます。これは、一般投資家の支えとして機能し、経営陣が企業の利益のために本当に活動しているかを保証し、投資家たちを安心させます。

その基準の一つとして、取締役員の大半が独立していることが挙げられます —すなわち、友人や投資家、監査役でのみ構成されていないということです。その他の基準として、監査委員会、報酬委員会、指名および企業ガバナンス委員会などの設置が求められます。これらの委員会の目的は、株主を代表して、主要な企業の舵取りに関して、独立した立場からの意見と、企業の経営陣の監督です。

理想的には、上場会社化以前の早い段階で、上記のように取締役会を専門化することが望まれます。企業にとって適切な取締役員を見つけるのに時間が必要なだけでなく、上場会社化する準備を行うにあたり、取締役会も、適切なアドバイスを送ったり、CEOがより高い目標を設定するよう助言したりすることが可能になります。例えば、取締役会が、四半期業績の報告の際に、初めのご意見番として機能することもあり得ます。

取締役員たちはまた、彼らの経験から得た見識やノウハウを提供してくれ、それはビジネスにとって非常に有益となるでしょう。その利点を活かしたくない人がいるでしょうか?

#16 予測性

今までで何度も何度も触れられたテーマがあるとするなら、それは予測性がいかに重要かという点でしょう… だからこそ、ここで別個に章立てして述べたいと思います。

もし一般投資家たちが、ビジネスについての予測性が整っていないと感じるならば、それはまさしくIPOを目指す企業を沈ませることとなるでしょう。どうしてでしょう? 彼らは、現在の業績と将来の方向性に関して明確に説明できる経営陣を有する事業に投資することを好みます。動きが遅く、安定しない業績をもつ事業は、投資家たちを弱気にさせます。なぜならこれらの兆候は、経営陣が将来を見据えておらず、業績を制御できていないことの現れだからです。それにより、評価額は減じ、株価は不安定になります。

とりわけ、投資家たちは「発行者」(IPOを行う、もしくは株を発行する企業) が彼らの投資に対するよき番人として役割を果たし、企業のリーダーシップチームが本当に深くビジネスについて理解しているか、何重もの保証を必要としています。経営陣は、それが損益のないキャッシュフローの実現であろうと、成長率の上昇のための費用の調整であろうと、全く異なる財務や競合環境への変遷への対応であろうと、いかなる場合においても十分なコントロールを担っており、どのレバーを引きどのノブを回すべきか、そしていつ行うべきか分かっているでしょうか?

たとえ、企業の業績が良くても、ノイズによりその兆候が目立ってしまうかもしれません。

経営陣が一般投資家に向けて約束した期待に応えられないということは、人が悪い信用履歴を持つことと同等の意味を持ちます。酌量すべき事情に関わらず、ローンや請求書の支払い損ねは、債権者側にとっては身辺が整理できていない兆候として認識されます。企業でもこれは同様で、応え損ねた予測は、業績の見込みに関して、市場に様々なノイズを生み出します (そして、その企業を投資家たちが言うところの「ペナルティーボックス」へと押し込みます)。たとえ、企業の業績が良くても、ノイズによりその兆候が目立ってしまうかもしれません。

そして、その通りです。正確な業績予測の作成は、新たな市場へと進んでいく成長段階の企業にとって、非常に難しいことなのです。特にそれは、広範な投資家集団やメディアによる、時には冷淡な衆目に絶えず晒されるなか行われるのです。しかし、IPOを目指す企業は、投資家コミュニティーに対し、将来の業績に関する指針を示し、その指針に沿って経営する能力を有することを示さねばならないのです。期待について適切にコミュニケーションを行う能力は、芸術的でも科学的でもあります

さらにもう一歩踏み込むと、期待をただ満たすだけでは株価のプラスの変動の起爆剤となるには十分ではないかもしれません。加えて重要なのは、企業の指針を基にした市場の期待値を打ち砕くことです。一般投資家たちを本当に興奮させるのは、企業が四半期もしくは年間の期待値を上回り、さらには予測を期待値以上に上方修正する際の、「打ち砕いたのちの上昇 (beat and raise)」の考えです。この考えは、指針上や一般投資家との会話の上では保守傾向にあるけれども、期待値をはるかに超える野心的な業績を狙う経営陣への、大いなる落とし穴が潜んでいます。

良いサプライズはみんな大好きです! 目標は、これまでの事柄に加えて、悪いサプライズを避ける、ということです。上場会社について、すべては「知られていると知られていること」(あなたの知っていること) と「知らないと知られていること」(あなたの知らないこと) に帰結します。

* * *

上場会社化すると言うことは透明化することであるにも関わらず、その公開までの過程は曖昧であることは、大変な皮肉ではないでしょうか。この点は、CEOたちが大っぴらに語ることのなかった唯一のトピックであるようです。この記事により、IPO準備の過程についての有耶無耶が少しでも晴れたのなら幸いです。

もちろん、ここで取り扱わなかった、その他の事柄もまだあります。 例を少し挙げるなら、IPOの価格設定から、公開後に創業者が経営権を守るために行えること (例えば2重構造の株式構造のトレードオフなど)、そして企業内部が正常に機能するための様々なこと、などです。また、本記事で触れた基準値の数々が時とともに変動する可能性、そしてあるものは他のものに比べ急速に変動する可能性があることは注目に値します。前に述べた通り、我々は最近、損益のないキャッシュフローが実現するまでの期間や、一般投資家が満足する利益というものは、市場の状況により変動するという事を見てきました。多くの企業はこれらの数値の範囲外であっても株式を公開し、それでも未だうまく機能しています。しかしながら、その他の項目、例えば、事業規模を定める収益額や、企業を高成長カテゴリにキープするだけの収益成長率については、実質的に変化するには何年、何十年とかかるでしょう。

だからこそ、それらの満たすべき水準を、さらにはIPOを行うべきか行わざるべきかという広い問いを超えて、このチェックリストにあげた多くの項目は、あらゆる市場において良き経験則となることでしょう。しかし、このチェックリストは単に企業を健全に保つためだけのものではありません。健全で持続可能なビジネスを築くための鍛錬であり、目標なのです。これらはどの道、創業者が行うべき事柄です: キャッシュフローと貸借対照表に注意を払い、製品の行く先と価格について考え抜き、素晴らしいカバナンスを保証し、企業文化を育む、などです。

このチェックリストは単に企業を健全に保つためだけのものではありません。健全で持続可能なビジネスを築くための鍛錬であり、目標なのです。

予測可能性とビジネス管理能力が、ここでの合言葉です。上記でも列記した、その他の頻出するテーマとして、投資までの道筋が重要である事、そしてそれは企業や事業分野の財務プロフィールとつながっている事が挙げられます。「ストーリーが彼らの戦略」と言うように、単なるマーケティングに留まらないあなたの企業のストーリーを明快に語れるということは、IPOを目指す上で重要となってきます。そのストーリーの一部には、あなたの企業がどのように、成長企業から収益のある企業へ、そして長い期間を経て、価値のある企業へと移り変わったかが含まれることでしょう。

世界レベルの企業は全て、このような軌跡をたどっています。皆が最後まで生き残る企業に投資したいと思っています。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Nicole Irvin

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: 16 Things to Get IPO Ready (or Just Build a Really Strong Business)Hire a CMO (2016)

BFORE (Biz FOR Engineers) はスタートアップに関するノウハウを届けるエンジニア向けのメディアです

運営元