名前を変えろ (Paul Graham)

もしあなたが米国にXという名前のスタートアップを持っているのに、x.comドメインを持っていないのなら、社名を変更したほうがいい。

その理由は、単に人々があなたの会社を見つけられないというだけではない。適切なドメイン名を持つということは、ユーザーを獲得するために重要だったが、特にモバイルアプリを持つ会社にとっては、今ではそれ以上の重要性を持つ。社名の .comドメインを持たないことの問題は、それが弱さを示すからだ。評判が先行するほど大きな会社でない限り、取るに足らないドメイン名は、取るに足らない会社であることを示唆する。反対に(Stripeが示すように)例えその名前が会社の業務とは関係ないとしても、x.comを持っているということは、強さを示してくれる。

優れた創業者でさえ、この現実を受け入れないことがある。彼らの否認は、2つの非常に強力な力に起因している。アイデンティティーと想像力の欠如である。

Xは自分たちそのものだ、と創業者は考える。他に良い名前などない、とも。その両方ともが誤りだ。

1つ目の理由は、この問題を一歩離れて見てみることで修正できる。あなたの会社が何か他の名前で呼ばれるのを想像してみよう。そうしてみれば間違いなく、現在の社名に対して持っているのと同じような愛着をその社名に対しても抱くことだろう。現在の社名を変えるという考えは、受け入れがたいように思えるかもしれない。[1]

現在の社名が、本質的に優れているという事実はない。社名に対する愛着のほぼ全てが、会社自身に対する愛着から生まれているんだ。[2]

他の社名は考えられないという、社名変更を否認する2つ目の理由を取り除く方法は、自分にはネーミングのスキルがないと自覚することだ。ネーミングは、優れた創業者になるために必要なスキルとは全く別物だ。あなたはスタートアップの偉大な創業者になることはできるけれど、社名の考案については望み薄だろう。

いったんそのことを自覚すれば、他に呼べるような社名はない、などとは考えなくなる。他にも同じような良い名前、あるいはそれ以上の名前がたくさんある。あなたがそのような社名を考えられないだけなんだ。

どのようにしてそれを見つけるのだろうか? その答えの1つとして、スキルがない場合に問題を解決する一般的なやり方である、名前を考えられる誰か他の人を見つけるという方法がある。しかし、社名の場合、別のアプローチも考えられる。明らかに不適切な名前ではない、ほぼ全ての言葉や言葉の組み合わせは十分良い社名となり得る。そしてそのような社名のドメインは豊富に存在し、価格が安いものや、まだ取得されてさえいないものも多数見つけられる。リストを作成して、いくつか購入してみよう。Stripeもそのようにして見つけた(探している時にparse.comも見つけ、Parseにいる彼らの友人が取得した)。

社名を考えることが、起業に必要な他のスキルとは全く異なるということを私が知っている理由は、私自身がたまたまそのような経験をしたからだ。かつてYCを運営し、今よりもたくさんスタートアップたちとの仕事をしていた当時、彼らが新しい社名を見つける手伝いをよくしたものだった。そのような時は8割方、営業時間中に最低でも20分に1つは良い名前を見つけることができた。

現在の私の仕事は、その会社が何をしているのかといったような、より重要な問題に集中しなければならない。そして彼らに社名変更が必要な時は、そのことを伝える。しかし私は、彼らが社名に執着する力の強さを知っており、従ってほとんどが耳を貸さないことも分かっている。[3]

社名の.comドメインを持たないスタートアップが成功した事例も、もちろんある。いくつものさまざまな過ちを犯したにも関わらず、成功を収めたスタートアップは存在する。しかしこの過ちは、他のほとんどの場合よりも見過ごせないものだ。もしあなたがこの問題を自覚するのに十分な自制心を持っているのなら、2~3日で修正できる。

上位20社と評価されるYC企業の100%が、社名の.comドメインを持っている。上位50社に広げても、94%が所有している。しかしYC企業全体の中で、現在社名の.comを持っているのは、たった66%に過ぎない。この事実が、残りのほとんどの企業にとって、何らかの方法で今後の教訓になることを示唆している。

 

 

注釈

[1] ちなみに、この思考実験は、国籍や宗教にも有効である。

[2] 貴社のアイデンティティーの一部となった社名に対する愛着は、社名そのものに対する直接的な愛情ではなく、その本質的属性に関する見かけの信念の集まりを表しているに過ぎない。従って簡単に割り引くことができてしまうだろう。(このことも、国籍や宗教によく当てはまる。)

[3] 社名の.comドメインを持っていないことが問題であることを、創業者が理解しているケースも時々あるが、後で購入できるという誤った思い込みにより、後れを取ることになる。そのドメインが売りに出されるという証拠などないにも関わらず、である。所有者からすでに売値を打診されているのでない限り、ドメインを購入できると思い込んではいけない。

この原稿の草案を読んでくれた Sam Altman、Jessica Livingston、Geoff Ralston に謝辞を送る。

 

著者紹介 (元記述)

Paul Graham

Paul は Y Combinator の共同創業者です。彼は On Lisp (1993)、ANSI Common Lisp (1995)、ハッカーと画家 (2004) の著者でもあります。1995 年に彼は Robert Morris と最初の SaaS 企業である Viaweb を始め、1998 年に Yahoo Store になりました。2002 年に彼はシンプルなスパムフィルタのアルゴリズムを見つけ、現在の世代のフィルタに影響を与えました。彼は Cornell から AB を、Harvard からコンピュータサイエンスの PhD を授けられています。

記事情報

この記事は原著者の翻訳に関する指示に従い翻訳したものです。
原文: Change Your Name (August 2015)

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