プロダクトの成功を定義する:メトリクスとゴール (Sequoia Capital)

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成功を定義し、モニタリングするのにゴールは重要です。ゴールが定まっていれば、目的地ははっきりとします。そこまでの道のりに変更が生じたとしても、です。ゴールは、もっとも大切な1つのメトリクスとターゲット、そしてそれを達成するための時間枠を結びつけることで、戦略、ロードマップ、イニシアティブ、戦術、そしてあなたのミッションをつなげるのに役立ちます。何よりも、このプロセスはあなたのチームが成功を定義するのに役立ちます。この投稿では、1つの鍵となる「重要なメトリクス (metrics that matters)」を特定することで製品の成功を定義する方法、そして適切なゴールを設定する方法を説明します。

適切なメトリクスを定義する

あなたの会社の成功に最も重要で、その下にチームを結集させることのできる1つのメトリクスは何でしょうか。Facebookにとって、それはアクティブユーザーです。WhatsAppにとっては送信数です。eBayにとっては総流通額であり、PayPalにとっては支払い合計額です。この「トップラインの」メトリクスを特定したら、それを中心に成功の基準を設定し、モニタリングし、その変化を促すものが何なのかを理解し、ひたすら正しい方向に押し進め、製品の健全度を適切に評価、管理することができます。

成長のためには、シンプルなトップラインのメトリクスはユーザーの数となるかもしれません。エンゲージメントのためには、それに費やした時間です。収益化には収益または広告主の数となるかもしれません。基本的に、メトリクスを選ぶときには、製品のビジョンと会社のミッションによって決めるべきです。将来の何年も先を夢に描き、製品と会社を思い描いたときに、それらを質的にどのように表現するでしょうか。

ビジョン・ステートメントは向上心に溢れ、人々を鼓舞し、未来に焦点を当てたものであるべきです。例えば、eBayのコマースに関するビジョンは、「人々によって可能となり、テクノロジーに支えられ、ずべての人に開かれている」です。eBayのミッションは、「お値打ち品とユニークな品揃えを求める世界中の人々のお気に入りの行き先になる」です。一緒にすると、これら2つのステートメントは、どんなに知られていない製品でも、誰もが欲しいものを納得のいく価格で見つけることができる、eBayが夢みる世界を指し示しています。

このゴールを最もよく象徴するトップラインのメトリクスは何でしょうか。サイトで買い物をしているアクティブユーザーの数ではありません。そのメトリクスでは、買い手が実際に適正な価格で欲しいものを見つけているのかを測ることができません。アクティブな買い手の数はどうでしょう。その数や、同様の買い手側のメトリクスは、ユーザーが欲しいものを適正な価格で見つけているかどうかを示すことはできますが、eBayのミッション・ステートメントの「ユニークな品揃え」の基準を満たすことができません。

もしかしたら、売り手側のメトリクスなら上手くいくかもしれません。売り手の数はどうでしょう。このメトリクスは役に立ちますが、売り手の出品する製品を測ることはできません。製品の数はどうでしょう。そのメトリクスでは、製品がユニークなのかどうか、製品が売れているのかが分かりません。

理想的には、我々の選ぶべきメトリクスは「売られたユニークな製品の数」を測れるものです。その数が大きければ、買い手はおそらく適正な価格で欲しいものを手に入れているでしょう。そのため、この場合の「適切なメトリクス」は、ユニークな製品販売の市場シェアとなります。しかし、このメトリクスは複雑で、定義、測定、増加が難しいものです。その代わりに、eBayは同社のトップラインのメトリクスに「一定期間に販売された製品の合計額」である流通総額(GMV: gross merchandise volume)を選びました。このメトリクスはユーザーにとっての価値を測定することはできますが、ユニークな品揃えを保証するものではありません。それでも、eBayのビジョンとミッションの精神の大半を捉えています。適切なメトリクスを選ぶことは、サイエンスであるのと同じくらいに、アートでもあるのです。

あなたの会社のトップラインのメトリクスを選ぶための追加のガイダンスは以下の通りです。

2 つ以上のメトリクスを選ばない

一つの「重要なメトリクス」は一体化の力があり、組織全体で優先順位を設定することを可能にしてくれます。すべてを追跡して、複数のメトリクスを選びたくなるかもしれませんが、それは賢明ではありません。多くのメトリクスは相互に関連しています。トップラインのメトリクスを変化させるのに役立つかもしれませんが、重要ではなく、気をそらすものになってしまう可能性があります。より多くのメトリクスゴールがあると、すべてを検討して、それらに対してトレードオフを図ることが複雑になります。シンプルさを保ちましょう。

虚栄のメトリクスや実行不能なメトリクスは避ける

例えば、会社がソーシャルメディアで獲得するいいねの数は通常、業績やカスタマーサクセスとは相関性がありません。

複数のメトリクスから選ぶときには、変化させることのできる最もシンプルで測定可能なメトリクスを選ぶ

例えば、広告主の数が収益と相関関係にあり、広告主の数の方が測定したり、変化させるのがより簡単だとしたら、広告主の数を選びましょう。1つのメトリクスから別のメトリクスへの影響を測定する交換比率をいつでも設定することができます。同様に、サンプルサイズの少ないメトリクスや、測定するのに時間のかかるメトリクスに究極的に興味があるのだとしたら、代わりに相関関係にあるメトリクスを測定することを検討してみてください。

製品の利用を最も密に示すメトリクスを選ぶ

例えば、FacebookやInstagramのような企業にとっては、最も重要な唯一のメトリクスはアクティブユーザーです。そのような企業で成長を測るには、1日当たり、週当たり、月当たりのアクティブユーザー(それぞれDAU、WAU、MAU)といったいくつかのアクティブユーザーメトリクスから1つを選ぶことができますが、それらは通常すべて相関関係にあります。想定される製品の利用に基づいて選択しましょう。例えば、製品が1日に1度以上利用されることが想定されるなら、トップラインのメトリクスとしてDAUを選びましょう。そうではなく、週単位での利用が想定されるなら(例:特定のレストランや会社等を検索する時)、WAUを選びましょう。DAU、WAU、MAUの1つが、大半の消費者向け企業にとってのトップラインのメトリクスとなります。

必要ならメトリクスを変更することを恐れない

これは非難につながることもありますが、誤ったメトリクスを動かそうとするよりは、ミッションを正確に反映するメトリクスに変更した方が得策です。適切なメトリクスでスタートするために時間と労力を前もってつぎ込むことが理想的です。しかし、もし変更しなければいけないのなら、先延ばしにせずにすぐに変更しましょう。

推進するもの(ドライバー)に結びつくシンプルなメトリクスを選び

あなたが新しいユーザー獲得を目指しているとしましょう。顧客となる可能性のある人々にメールを送り、その中の一部がランディングページを訪れます。そのユーザーの少人数の集団がサインアップし、さらに少人数の集団がアクティブユーザーとなります。これらの数から、ユーザーアクティベーションの問題について考えるシンプルな枠組みを作り出すことができます(下記の式を参照)。前述の4つの項のどれを増やしても、アクティブユーザーの合計数を増やすことができます。例えば、ウェブサイトには訪れるけれどサインアップはしない人の間に最も大きな落差がみられるとしたら、サイトを訪問してサインアップする人の割合を、変化させるメトリクスにするのが理にかなっているでしょう。

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比率を避ける

あなたがクリックスルー率を本当に大切にしているのなら、代わりにクリック数を測定できるか考えてみましょう。しかし、これは厳格な規則ではありません。「重要なメトリクス」として比率を上手く利用した企業の例は数多くあります。

必要ならカウンターメトリクスを検討する

上記のeBayの例では、有用なカウンターメトリクスには、販売されたユニークな製品や出品されたユニークな製品の数が含まれます。そのようなカウンターメトリクスが変化しないままか、減少するとしたら、ミッションから逸れてしまっていることを示唆しているのかもしれません。これを解決するには、それらのカウンターメトリクスが減少しないようにする、という明白なゴールを設定することができます。eBayのケースでは、主要なGMVメトリクスはそのままになりますが、複雑な状況の中で、カウンターメトリクスによって会社が抑制と均衡を保つことが可能になります。

ビジネスの進化にしたがって、メトリクスも変化させる

あなたのトップラインのメトリクスは、時を経るにしたがって変わる必要があるかもしれません。例えば、モバイル時代以前には、ユーザーはFacebookのような製品をそれほど頻繁にはチェックしませんでした。なぜならアクセス手段やネット接続が不足していたからです。モバイルの利用が増えるに従い、これらの企業はトップラインのメトリクスをMAUからDAUへと改訂しました。この進化は、企業が新しい製品をローンチするときにもよくあることです。例えば、AmazonビデオはおそらくAmazon全体への訪問者を増やした可能性が高く、そうすると同社のトップラインのメトリクスの変更は当然となります。

ゴール設定

チームはたいていの場合、メトリクスとゴールを同時に考えます。これらは分離するのが難しいからです。適切なメトリクスとゴールを特定したら、製品チームが遂行する戦略とロードマップを設定する準備が整います。ゴールは達成したいことをハイライトするべきであり、多くの場合、企業の成長を加速させる足がかりとなります。共通の目標を中心に会社を一体化させ、チームにその約束に対する責任を課します。

例として、あなたがアクティブユーザーの数を増やしたいと想定しましょう。ゴール・ステートメントは「MAUを2018年第4四半期までに1,000万人にする」とすることができます。このゴールはメトリクス(MAU)とターゲット(1,000万人)、そして時間枠(2018年第4四半期)を結びつけ、製品チームが達成したいことを明確に表し、会社に目的を与えます。ゴールはシンプルで、実行可能かつ達成可能であり、そして何よりも重要なことは、簡単に測定、追跡できる必要があります。

ゴールは下記に基づいて選ぶことができます。

1. 製品やビジネスの志

大半の長期的ゴールは、企業のミッションに基づいています。例えば、あなたの会社がビデオ業界にいるとしたら、ビデオを見るのに費やされた時間のシェアを最も速く増大させたいと願うかもしれません、そのゴールをX年で達成したいとしたら、それを分割して、順調に進むにはこの先Yヶ月で達成するべき成長はどれくらいなのかを割り出すことができます。

2. 製品のメトリクス

製品がすでにすばらく市場に出回っているとしたら、一定の期間におけるトップラインのメトリクスのゴールを決定するために、「ボトムアップ」での予測の練習をすることができます。例えば、MAUの予測には、季節性、プラットフォーム、国、普及率、製品変更の過去のデータを検討することができます。(将来的にブログで詳細な予測のアドバイスをする予定です。)

3. 新製品

製品が全く新しいものだとしたら、外部の基準をみて、「トップラインダウン」のゴールを設定するのが有効です。例えば、製品がメッセンジャースタイルのコミュニケーションアプリだとしたら、同様の企業の成長を研究して、そこから自分のゴールを導き出すことができます。完全に新しい製品については、実績を見るまで、ゴールの設定を数ヶ月先延ばしにすることもできます。

ゴールを選ぶ際のガイダンス

ゴールを選ぶ際の一般的なガイダンスは以下の通りです。

期限を定めたゴールを選ぶ

第1四半期の始め、または年末までにゴールを達成するといった、時間枠を設定しましょう。期限のないゴールに関して、人に責任を課すことは出来ません。

異なる時間枠ごとに、異なるゴールを設定する

会社のビジョンやミッションに沿った野心的な長期的ゴールを選ぶとともに、そこに到達するために必要なより具体的で短期的なゴールも選びましょう。短期的なゴール設定の方法は、製品チームがどのように運営されるのか、そして業績を評価する時間枠によって決めるべきです。例えば、四半期サイクルで運営する会社もあれば、半年、1年サイクルで運営する会社もあります。ゴールはこういった異なる時間枠を反映するべきであり、チームは主に短期的ゴールに基づいて行動する必要があるのです。

80 - 20ゴールと50 - 50ゴールの2つのゴールを設定する

80 - 20ゴールは達成の可能性が80%あるものです。これらのゴールは達成可能であり、その達成はチームのモチベーションとなります。しかし、それはチームの力を限界まで引き伸ばし、より高いレベルで仕事させるのにはつながりません。そこで、達成の可能性が50%しかない、50 - 50ゴールを設定することも重要です。このゴールはより困難ですが、達成した時の満足度はずっと高くなります。何にしても、簡単に達成できる目標だけを設定して「実力を隠す」のはやめましょう。目標を高く設定することを怠ると、チームに自己満足が広がり、製品の衰退につながりかねません。いつでも80 - 20もしくは50 - 50ゴールを達成するか、それらを超える場合には、目標を低く設定しすぎている可能性があります。

具体的なゴールを設定する

あなたのゴールが測定可能であって、「ユーザーを喜ばせる」といったものではないようにしてください。トップラインのメトリクスと時間枠を組み合わせ、具体的で定量的なゴールを設定するようにしましょう。

ゴールを書くときには、「どのように (how)」を含めない

ロードマップやイニシアティブを計画し、ボトムアップの観点からゴールを設定するのに具体性は重要ですが、ゴール・ステートメントそのものはシンプルかつハイレベルである必要があります。

ゴールの設定はアートであるのと同じくらいサイエンスでもある

ゴールを設定する際には、多くの未知数に直面するでしょう。例えば、市場、競争相手、集団定着率、新しい国への展開等がトップラインのメトリクスにどのように影響するか理解できないかもしれません。メトリクスを選ぶ時と同様に、ゴールの設定も一部はサイエンス、一部はアートという事実を受け入れましょう。

次なるステップ:戦略と、その次へ

第4四半期までに月間のアクティブユーザーを10%増やすという50 - 50ゴールを設定した消費者向け企業を想定してみましょう。このゴールは、上で挙げた多くの基準を満たします。具体的で、定量的、そして期限が定められており、適切なトップラインの成長メトリクスを含んでいます。製品構築の次なるステップは、そのゴールをどのように達成するかを規定することで、たとえば「ユーザーを復帰させる」といった製品戦略を設定しましょう。そしてこの戦略は、「活性化していないインドのユーザーを復帰させる」といったロードマップを推進するのに役立ちます。企業はこのロードマップの中から、トップラインのメトリクスを動かすのに最も貢献するであろう具体的なイニシアティブを生み出すことができます。そのようなイニシアティブには、「インドでのSMS通知を改善する」といったものが含まれ、それが今度は「低価格Android携帯電話向けのSMS通知を構築する」といったエンジニアリングの課題につながります。この例は、企業のビジョンとミッションがどのようにして、そのゴール、戦略、ロードマップ、イニシアティブ、タスクをドライブできるかを示しています。将来的にこのブログでは、データに基づくロードマップと戦略に関する詳細なアドバイスをお伝えします。

重要なポイント

  • 製品のビジョンを象徴する、実行可能な一つのトップラインのメトリクスを見つけ出しましょう。このメトリクスは測定しやすく、ビジネスのドライバーと結びついている必要があります。
  • ゴールは製品の成功を定義し、企業の狙いを小さく分割することによって設定することが可能です。古くからある製品に関しては、ボトムアップ予測のエクササイズを試してみて、ゴールとトップラインのメトリクスを結びつけてみましょう。新しい製品については、外部の基準と比較した実績を評価するトップラインダウンアプローチを利用する必要があります。
  • ゴールは測定可能で、期限の定めがあり、時間枠が少しずつずれた形で設定する必要があります。チームの力を最大限に引き伸ばすには、80 - 20ゴールだけではなく、50 - 50ゴールも設定しましょう。ゴールは十分にハイレベルに保ち、「どのようにやるか (how)」を指定するのは避けましょう。

 

この記事はSequoia CapitalのData Scienceチームによるものです。Jamie Cuffe、Avanika Narayan、Chandra Narayanan、Hem Wadhar、Jenny Wangがこの記事に執筆協力しています。質問、コメント、その他フィードバックに関しては、data-science@sequoiacap.comまでメールでお願いします。

 

著者紹介 

Sequoia Capital (Medium)

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記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Defining Product Success: Metrics and Goals (2018)

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