プロダクトの成功のためのフレームワーク (Sequoia Capital)

目次

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長期間にわたり成功する製品には、いくつかの条件が必ず存在します。それは、Product/Market Fit、プラスのユニットエコノミクス、そして拡大・成長するための能力です。Product/Market Fitのためには、人々が本物の価値を見出して何度も戻ってくるような、製品の深い魅力が必要です。プラスのユニットエコノミクスのためには、ビジネスに欠かせない基礎的な財務要素に対し、注意深く気を配る必要があります。効率的な拡大を果たすためには、他の要素と共に、持続可能な組織が必要です。この記事では、持続可能な製品と、拡張可能な組織の両方を構築するためのガイダンスを提供します。具体的には、フレームワークの開発がその手段となります。

フレームワーク:それは何か、そしてなぜそれが必要なのか

フレームワークは問題について考える方法であり、何か複雑なことを理解するための手段です。フレームワークは単純化を助けてくれます。多くの問題は複雑に見えますが、フレームワークを作り出し、それを通して考えることで単純化することができます。フレームワークによって、問題解決を扱いやすくできます。

フレームワークはビジネスのみに限らず、私たちの個人的な生活にも普遍的に存在します。意識的かどうかに関わらず、私たちは多くの意思決定を単純化して結論を導くために、フレームワークを使います。例えば、どの学校に行き、何を専攻するか、というような選択をする場合です。鍵となる判断軸(学校、プログラム、将来の潜在的な収入、家からの距離、等)を決定し、基準(上位5校、上位5プログラム、10万ドル以上の収入が得られる可能性、西海岸にある、等)を設定することで、私たちは意思決定のためのフレームワークを作り出します。それと同じプロセスが、製品のパフォーマンス、効率的な組織の構築方法、ユーザーを維持する方法、そしてより多くのユーザーをアクティベートする方法などを理解するのに役に立ちます。

概念的なフレームワーク無しに、問題を認識・解決するためのプロセスを拡張、反復、拡大、再利用するのは困難です。フレームワークは問題の根本原因や、問題を大きくしている関連要因の効果的な診断と理解、実用的な洞察の獲得、そして発見したことをコミュニケーションするのに無くてはならないものです。

フレームワークの構築

フレームワークは問題をいくつかの部分に分解することで開発します。各部分は、その後さらに分解することができます。このプロセスを理解するのに役立ててもらうため、以下に例を示しました。

下記に示した要点は、各事例に固有のものではありません。むしろ、多くの状況に適用することができます。

例1:データを基にした会社作り

会社レベルでは、ビジネス全体と結び付いた単独のフレームワークを確立することが、しばしば役に立ちます。会社にとって何が最も重要なのか、従業員が理解するための助けとなるフレームワークは、チームを動機付け、1つのメトリクスを中心に各個人をチームとしてまとめ、会社のゴールとミッションを結び付ける役に立ちます。また、会社レベルでの単独のフレームワークは、対立を解決したり、チームの構築方法を決定する助けにもなります。

フレームワークがデータに通じた会社作りに役立つ例として、Facebookの例を検討してみましょう。Facebookのミッションは、「コミュニティ作りを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」ことです。同社の夢は、全ての人が同社のプラットフォームを利用する世界です。そのような世界では、私たち全員が周りのコミュニティと繋がって深く関与しており、従って人と人とがより身近になる、というものです。

メトリクスという視点から見た場合、Facebookのミッションは、ユーザーの拡大に焦点を置いていることを示唆しています。すなわち、地球上の全ての個人に同社のプラットフォームを使用してもらいたいと考えているのです。この目標を最もよく反映するメトリクスは、月間アクティブユーザー数、または日間アクティブユーザー数(DAU)でしょう。なぜなら、強固なコミュニティを構築し、人々の繋がりをより密にするためには、ユーザーが製品に深く関与している必要があるからです。そのような行動を促すために、Facebookは最近、ユーザーがプラットフォーム上で過ごす時間について、(単純な合計時間ではなく)「意義ある」時間であることに優先順位を置き始めています。ユーザーは今や、口コミの動画よりも、家族や親しい友人の投稿をより多く見るようになりました。

Facebookは自社製品の拡大とユーザーの関与を維持し続けるため、プラットフォーム上での広告の実施により収益化を図る必要があります。成長・エンゲージメント・収益化という3つの要素は最重要のレバーであり、それによってFacebookは収益を拡大することができるのです。このシンプルなフレームワークは、図1で示す通りです。

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それらのレバーを中心に事業単位を組織化することで、会社は自らをよりデータに通じ、メトリクスに焦点を置いた組織へと変えることができます。Facebookの場合、成長担当チームは同社の「北極星 (north star)」メトリクスとして、DAUの拡大に集中することができました。そのようなアラインメントは、個別の取り組みの価値に関して起こる対立を解決する助けにもなりました。例えば、もし他の全てのことが同等であると分かっているとすれば、やるべき適切なことは、DAUを増やす製品の出荷、となるでしょう。

同様に、エンゲージメント担当チームはユーザー1人あたりの利用時間の拡大に焦点を置き、収益化担当チームは利用時間毎分ごとの収益拡大に取り組むことができました。

また、それらの目標を効果的に追求するには、鍵となるメトリクスの向上が、会社レベルでの他のメトリクスにマイナスの影響を与えないことをチェックし、バランスを取る必要があります。例えば、DAUを増やそうとしている場合、成長担当チームは利用時間あたりの収益も、モニタリングする必要があります。

図1で示したようなメトリクスは、チームレベルや事業単位レベルでも有用ですが、会社レベルでのシンプルなフレームワークの開発は、あらゆるレベルで事業を監視する能力を大幅に引き上げてくれます。全てのメトリクスデータが集められた最上位レベルでは、経営幹部用のダッシュボードが各事業単位の全体的な運営状況を浮き彫りにします。

またダッシュボードは、各事業単位のリーダーたちが自分のチームの運営状況、事業の原動力となっている要素、考慮すベき戦略をより深く理解できるようにカスタマイズすることができます。それらのダッシュボードは、各事業単位のさらに下の単位に分解して、中間レベルの幹部社員たちが監視できるようにすることもできます。そうすることで、自分のチームが会社レベルの事業目標に対しどのように影響を与えられるのか、見極めさせることができます。このように会社レベルでの単独のフレームワークは部分へと「分解」することができ、それにより各事業単位が自らのメトリクスを監視できるようにすることで、あらゆるレベルで明確さ、当事者意識、説明責任をもたらします。

例2:ユーザーの活性化

この例では、成長担当チームがユーザー活性化のためのフレームワークを構築する方法について検討します。ユーザーの持続的な拡大(あらゆる製品にとって特に重要な目標)には、既存ユーザーの維持、チャーンしたユーザーの復帰、新たなユーザーの獲得が必要です。成長担当チームは、マーケティングファネルの一番上の段階では新規ユーザーの獲得に焦点を置き、その後に続く各段階ではユーザーの転換に注目します。

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新規ユーザーには、オーガニックまたは有料のさまざまなマーケティングチャンネルを通してリーチすることができます。図2は、電子メールによるアウトリーチのファネル図です。「リーチしたユーザー」には、電子メールを受け取った全てのユーザーが含まれますが、メールを読むのは一部のユーザーに過ぎないでしょう。メールを読んでも、アプリをインストールできるページへのリンクなど、行動を誘引する仕掛けをクリックするユーザーは僅かな割合しかいません。リンクをクリックしたユーザーの中でも、実際にインストールを完了するのはほんの一部でしょう。インストールした人たちも、アプリを開かず、ランディングページに到達せずに終わる場合があります。そこからごく小数のユーザーがサインアップページに到達し、新たなアカウントを作成してログインに成功します。ログイン成功数を計算する単純な式は、次の通りです。

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上記の式の各項目を、ログインの総数を増やすレバーとして扱うことで、このフレームワークを利用して、新たなゴールやイニシアティブ、および新製品のロードマップを設定することができます。ユーザーの活性化を向上させるために最も重要なのは、ファネルの各段階を理解することです。最初の例で言えば、プロセスの各段階を監視することが重要であり、その全てのレベルで最適化を行うべきです。監視しているダッシュボードの式の部分に項目を作り、それを関連ベンチマークの文脈の中で深く理解します。そして「データによる診断」を行って各項目に影響を与えると思われる要因を仮定し、それに対してゴール、戦略、製品ロードマップを設定することで、「設計による対処」をする必要があります。

例3:ユーザーの維持

全体的な成長をさらに向上させるためには、ユーザーのリテンションを理解するためのフレームワークを開発することが有益です。以下に、ユーザー群のファネルの異なる階層を統合する式を示しています(例2のフレームワークと似ています)。

リテンションは、自社の製品に価値があるかどうか、およびProduct/Market Fitを見出せたかどうかを判断するための、最良の指針です。なぜなら、リテンションは自社の製品を試した人々が、もう一度その製品を使おうと思うぐらい気に入ったかどうかを教えてくれるからです。堅実なリテンションを可能にする最良の方法は、コアユーザー(最もエンゲージメントの高いユーザー)が気に入る製品を作り上げることです。これには、ユーザーが初めて製品を「理解する」魔法の瞬間(下記の例4を参照)を作り出すことと、ユーザーの継続を確立する転換点を特定することの両方が含まれます。

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図3は、ユーザー群のリテンションファネルを示しています。ユーザーはサインアップの流れを通って、アクティベートされたユーザー、すなわち「新規」ユーザーになっています。

多くの製品でユーザーリテンションにとって重要なのが、最初の1日、または最初の1週間です。ユーザーが購入するのに十分なコンテンツが用意されていますか?ユーザーにはチャットする親しい友人が何人かいますか?ユーザーは製品について明確に理解していますか?

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1、7、28、84、364日後のユーザー群のリテンションレートを知ることで、製品担当チームがその取り組みに優先順位を付けて注力し、具体的な戦略、ロードマップ、構想を作り出すのに役立てることができます。例えば、もし D364/D84 =1(当該製品にやって来た人の数が84日後から364日後までの間、一貫して変わらなかったことを示す)であれば、ユーザーのネットチャーンは全て84日以前に起こっていることが分かります。また、もしD84/D28=1であれば、ネットチャーンは全て最初の28日間に起こっていることになります。

このシナリオでやるべきことは、最初の0、1、7、28日の間にできることに焦点を当て、新規ユーザーに対し可能な限り最高の体験を作り出すことです。選択肢を調査するため、予備解析を実施することもできます。予備解析では、各段階でのユーザーの離脱の理由を仮定し、その潜在的な原因を分析して、問題やチャンスを特定します。そして、自分の持っている手段や実施できることに基づいて、製品ロードマップの提案を行います。予備解析の詳しいやり方については、今後執筆する記事で説明する予定です。

前述の各例と同様に、リテンションファネルの各階層を監視することが、製品の改善にとって重要になります。最も高い階層でリテンションを把握するためのダッシュボードと共に、さまざまな経過日数でのリテンションに対応する追加のダッシュボードを作ることを、強くお勧めします。

例4:最初の体験と魔法の瞬間

多くの製品にとって、ユーザーの関与と維持に最も重要なのが、初日の体験です。ある製品を初めて体験する時、ユーザーはその製品で何を期待できるのか、どのような製品なのか、そしてどのように使いこなすのか、把握していません。そのため、ユーザーに対して初日に素晴らしい体験と、毎日戻って来たくなるような「魔法の瞬間」を提供することが重要です。そしてユーザーに、その製品がもたらす価値を理解してもらうのです。

このことは、ゲームの分野で特に重要です。ゲームでは通常、初日と2日目の間に大きな離脱が起こります。ゲーム製品の利用初日に多くの時間を使ったユーザーほど、次の日も利用しに戻ってくる可能性が高くなります。そのため、ほとんどのゲームが新規ユーザーに対して、チュートリアル、レベル、ミッション、ボーナス、賞金などを提供するのです。

例えば、図4で示した架空のゲームについて想像してみましょう。このゲームでユーザーは自分のアカウントを有効化し、続けてホーム画面に行き、チュートリアルを完了することで最初のレベルに達し、ボーナスを獲得します。これが「魔法の瞬間」の役割を果たします。ユーザーはミッション1を開始するように促され、そのうちの一部が最終的にミッションを完了するでしょう。

この例において、ホーム画面に到達しないユーザーの内、2日目(D1)に戻って来るのはわずか5%に過ぎません。一方、チュートリアルを終了したユーザーが次の日に戻ってくるチャンスは40%あり、チュートリアルと最初のミッションの両方を終了したユーザーに至っては、80%の確率で戻って来ます。このことから、ゲームの製品担当チームが重点を置くべきポイントは、ユーザーにミッション1を完了するよう働きかけることだと分かります。しかし、もしチュートリアルの段階で大部分の人がチャーンしてしまい、ミッション1を完了する人の割合が非常に小さければ、チームは大きなチャーンが起こっているチュートリアルの前のユーザー体験に焦点を当てるべきです。

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ファネルの各段階におけるユーザーリテンションと、1日後、1週間後など一定期間経過後の継続率間の関係性の両方を理解することで、エンゲージメントを上げるためにはどこに焦点を置いて取り組むべきか、より良く理解できるようになります。ある段階のチャーンレートが取るに足りないほどの数字であれば、その段階での対処に高い優先順位を置く必要はありません。一方で、全体のコンバージョン率に大きな影響を与える「壊れた」体験には、対処するべきです。多くの場合、その修正は、デザインフローの変更やバグの修正と同じくらい単純なものです。

結局のところ、この例におけるゴールは、多くのユーザーをミッション1に到達させ、その過程で魔法の瞬間を作り出し、ユーザーを長期間にわたり維持できるようにすることでしょう。この一見したところ解決困難な問題も、より小さな部分に分解してフレームワークを作ることで、製品担当チームが分担して克服することができるのです。

フレームワーク作成のヒント

現象を理解し、適切なモデルを構築する

問題解決の最初のステップは、現象を掘り下げて理解することです。現象を理解し、望まれる成果が把握できたら、次は問題を解決するための多様なアプローチの構築について、検討すべきです。それらのアプローチが、基礎的な構成要素を1つに結び付けて問題を単純化すると共に、解決のためのフレームワークをもたらします。フレームワークからは、モデルが生み出されます。問題に適合するフレームワークは多数作ることができますが、それぞれのフレームワークは多様です。望まれる成果を最適化する、適切なフレームワーク/モデルを選ぶのに、人の判断を使う必要がある場合もあります。例1では、Facebookのミッションや同社が提供する製品、ユーザー層の様子、収益化の方法を理解する必要があります(現象学的に)。そこからは一連のフレームワークが、モデルに関するこの幅広い問題について考える方法を理解させてくれます。ここで最良のものとして選ばれたモデルが成果を最適化し、データに通じた組織構造を形作るのです。

成果を把握する

フレームワークを作り出すためには、達成しようとしている成果 (outcome) を理解する必要があります。例1において望まれる成果は、組織のさまざまな部分を論理的に結びつける式を開発することです。例2のゴールは、ユーザーをより活性化し、ログインさせることです。例3の望まれる成果は、リテンションを向上させることです。そして例4では、初日の体験を改善し、最終的にProduct/Market Fitの達成に役立てることが、望まれる成果です。適切なモデルを選び、適用しようとしているものに対して最適化するためには、成果を理解することが非常に重要なのです。

構成要素を特定する

有益な製品ロードマップを開発するためには、ファネルの階層を慎重に選ぶ必要があります。それは実施可能で、望まれる成果を導き出すのが明らかな階層であるべきです。例3における望まれる成果は、長期間にわたりできるだけ多くのユーザーを維持することです。ユーザーの初日、第1週、その後の段階において実施すべきレバーは一律ではないため、このリテンションに関する問題は時間に基づいて部分に分解するのが合理的です。例えばあるロードマップでは、友だちの数を増やすことで、最初の1週間における継続率が改善されるかもしれません。

式を作る

式はプロセスの各ステップや段階を結びつけ、最も重要なことを理解する役に立ちます。また、扱いやすいメトリクスを「北極星のメトリクス」と一致するように変化させることもできます。そのような式は、ファネルを一連の比率のメトリクスに変換することで作成することができます。そうすることによって、望ましい成果を達成するのに役立つレバーを見つけ出します。

最後に

フレームワークはデータに通じた会社を作るのに有益なツールであり、ロードマップを導いて、拡張可能な組織と持続可能な製品の両方を作り上げる役に立ちます。前述の例で示した通り、フレームワークを用いることで、会社を鍵となるメトリクスと合致させ、成長・アクティベーション・リテンションの問題を分解し、魔法の瞬間と素晴らしい初日の体験の提供によって、ユーザーのエンゲージメントを向上させることができます。

しかし、それら多くのメリットがあるにも関わらず、フレームワークは特効薬ではありません。ファネルの作成方法を決めるのが難しい場合もあり、ファネルのさまざまな部分を測定するのが不可能かもしれません。結局のところ、人間の創造性、経験、規律、努力、判断の代わりになるものはありません。

要点のまとめ

  • 問題を部分(ファネルの階層など)に分解し、それらの部分を結びつける式を導き出すことで、フレームワークを設計しましょう。
  • 全体として望まれる成果と、そのためのレバーや実施可能な行動を、論理的に結びつけるフレームワークを確保しましょう。
  • フレームワークのメリットを享受するには、分析、設計、実施、検証、最適化に優れていることが必要です。

 

この記事はSequoia Capitalのデータサイエンス・チームが制作しました。この記事の寄稿者はJamie Cuffe、Avanika Narayan、Chandra Narayanan、Hem Wadhar、Jenny Wangです。ご質問、ご感想、その他のご意見がございましたら data-science@sequoiacap.com までメールをお寄せください。

 

著者紹介 

Sequoia Capital (Medium)

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記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Frameworks for Product Success (2018)

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