CMO を雇う (Jeff Jordan)

スタートアップにおいて、Chief Marketing Officer (CMO) は営業部長と共に、成長を推し進める責任を負う重要な役割を担います。基本的にCMOは会社のユーザー/顧客基盤を成長させる責任を負い、またそれに関する評価基準に対しても責任を負います。CMOはまた、次のような事柄についても責任を負います。収益と利益の増加。エンゲージメントとリテンションの促進。そしてクリエイティブ戦略、ブランド戦略、コミュニケーション戦略を指揮することです。

しかしながら、CMOの役割は各会社によって大きく異なります。役割の違いの中でも最大の物の1つがよく生じるのは、消費者を相手にする企業と、企業を相手にする企業を比べる場合です。消費者向けビジネスにおいては、CMOは広告やオーガニック獲得といった手段を通じて、直接的にユーザーを獲得することに対し責任を負う場合が多いです。企業向け事業においては、CMOは一般的にリード獲得やセールス・イネーブルメントなどに対し直接的な責任を負います。また営業責任者と緊密な連携を取り、複雑かつ冗長な市場開拓の機構に対し供給を行わなければなりません。

このように、消費者向け企業のCMOと、企業を相手にする企業のCMOは、2つの異なったタイプの役割です。一部のCMOはこれらの異なるタイプの企業をまたがって活動できるだけの幅広いスキルと経験を持っているかもしれませんが、私の経験からすると、どちらのタイプの企業においても世界レベルである人間が見つかるのはとても稀なことです。企業が消費者向けから企業向けへと転換する際に、自社のマーケティングチームを完全に再構築することが多いのはこうした理由からです。消費者向け企業のマーケターと、企業を相手にする企業のマーケターは、まるで異なる言語を話しているかのように思われてならないのです。

しかしCMOは顧客のタイプ以外でも、企業が必要とするマーケティングのタイプによっても異なってきます。Intuitの創業者であるScott Cookは何年も前に、世の中には2つのタイプのマーケターがあるという意見を語ってくれたことがあります。すなわち、芸術家と科学者です。

「芸術家タイプのCMO」はマーケティングにおける多くの質的なタスクのエキスパートです。質的なタスクとは、例えばブランドのポジショニングやマーケティング資料の作成、そしてポジショニングと一貫するストーリーテリングや、メディアキャンペーンの実行などです。このようなCMOは (特にオフラインの) メディアに巨額を投じる企業において成功することが多いです。

「科学者タイプのCMO」はマーケティングにおける多くの定量的なタスクに秀でており、特にユーザー獲得戦略、エコノミクス、そしてよくグロースハッキングと関連付けられるその他の最適化のエキスパートです (グロースハッキングは一部の人間から、実際にはマーケティングの別名であると受け止められています。しかしこの言葉は、ネットワーク効果のあるビジネスの文脈においては、独自の言外の意味を持ちます) 。科学者タイプのCMOは、エンジニアリング分野、もしくはダイレクトマーケティングの世界から出てきた人間が多いです。ダイレクトマーケティングの世界では、正確なデータに基づいたパフォーマンスマーケティングおよび広告を顧客に対して行うことが常に至高の目標とされてきました。

では、CMOを雇う際にすべきことは何でしょう?

まずCMOを雇う前に、あなたの事業がどのようなタイプのCMOを必要としているかについて、十分な情報に基づいた全体像を作ることが大切です。あるタイプのCMOを雇ってから、そのCMOに全く異なった役割で成功するよう期待するのはリスクが高すぎます。経験豊かなマーケターのほとんどは、自分の「スイムレーン」内に留まることを好みます。彼らの履歴書における過去の経験は、キャリアを通じて一貫しているのが一般的です。そして、CMOが自ら定めたレーンを越えることに成功したのを、私はめったに見たことがありません。

とは言え、あらゆるマーケティングは科学と芸術のコンビネーションです。そのため、企業は基本的に両方の分野において、ある程度のレベルを必要とします。あなたが優先して必要とする事に合わせてCMOを雇い、そのCMOのチームに欠けている物を補う助けとなる人材を CMOに雇わせてあげて下さい。例を挙げると、「科学者タイプのCMO」が大変優秀なコミュニケーション/PR 担当のバイスプレジデントを雇うといったような事になります。しかしこのような雇用は、あなたが雇った特定のタイプのCMOによってマネジメントされることを認識しておいて下さい。CMOの考え方はマーケティング組織全体の優先事項を決めることとなり、その中には欠点を補うために他の人間を雇うことも含まれているのです。

(役に立つかどうかは分かりませんが、私が一緒に働いてきた消費者向けテック企業のほとんどは、科学者タイプのCMOを強く好む傾向にありました。彼らがオフラインメディアよりもオンラインマーケティングを好む傾向にあったためです。)

マーケティング機能

マーケティング組織に必要な機能は何でしょうか?注意しなければならないのは、こうした機能は必ずしも個人の雇用に関連付けられるわけではなく、また特に初期の段階では、全てのマーケティングチームがあらゆる機能を手にしている訳ではないということです。しかし会社が成長するにつれ、マーケティングチームは以下に挙げる機能の多く、あるいは殆どについて、それらを専門とする人材を雇うことが多いです。ここでは私の経験に基づき、マーケティングの機能を新しい会社に追加されていく順番にリスト化することを試みてみました。

ユーザー獲得/リード獲得は実際の顧客や潜在的な顧客を直接的に獲得することにより、会社の成長を助けます。リード獲得には複数のチャンネルが関わります。検索エンジンマーケティング (SEM/有料)、検索エンジン最適化 (SEO/無料)、ソーシャル (有料および無料)、そしてコンテンツ広告などです。消費者向け企業のマーケティング予算のかなりの部分が通常、ここに属します。企業を相手にする企業の場合でも、この機能は同じぐらい重要ですが、獲得されるユーザーは往々にして開発者であるため、幾つかの方法が異なります。

マーケティングコミュニケーション、別名「マーコム」 (PRと呼ばれる時もあります) は、会社および経営陣の物語を定義し、メディアと連携してカンファレンスおよびその他の手段を利用することで関心や理解を高めます。オフラインおよびネイティブ広告の買い付けもまた、ここに属することが多いです。時折、PR/コミュニケーション機能はCMOから分離され、CEOに直接報告されている場合もあります。しかし、機能の目的は基本的には同じです。

リテンション/エンゲージメントは、既に獲得したユーザーをエンゲージさせたままにすることを目的としています。この機能における主要な取り組みには一般的に、(Eメールまたはアプリ内での) メッセージを送付することによるユーザーのフォローアップや動機づけ、およびリターゲティングキャンペーンなどが含まれます。

ビジネスデベロップメントでは他の企業と協力することでユーザーの増加、関心、または収益化を促進します。彼らは「取引」のチームであり、戦略的なパートナーシップを通じて事業を成長させようと努力します。

ブランドポジショニングではブランドが何であるか (そして何でないか) についての、とても明確な定義を作り出します。これにはブランドに関連する物を競合群として位置づけることも含まれます。一般的にこうした事は創業者によって会社の初期の段階に定義されますが、その後は往々にしてマーケティング機能によって洗練され、市場での取引、顧客からのフィードバック、差別化の要望、他様々な事に基づいて更新されていきます。

クリエイティブは、ブランドのポジショニングを広告、販促物、ウェブデザイン、そして製品のユーザーインターフェイスやユーザーエクスペリエンスさえも利用して具体化させます。

イベントは成長の促進を助けます。また顧客のみならず、開発者や特定のプラットフォームのプロバイダーなどといった他のステークホルダーとも関わり合えます。著名なイベントの例としてはOracle World、Salesforceが主催する Dreamforce、そしてAirbnb Open などがあります。

調査/分析はパフォーマンスに関する、財務には関係しないけれど重要な尺度についての、十分な情報に基づいた見解を作り出します。ここで言う尺度には、ブランド認知度、ターゲットユーザー、競争的ポジショニングなどがあります。この機能におけるベストプラクティスには、一次および二次調査の資料の両方を活用することなどがあります。

もう1つ、中核となる機能としてプロダクトマーケティングがあります。企業を相手にする企業、またはB2B企業においては、この機能は製品が実現可能になった段階で一番最初に組成される傾向にあり、また組成は往々にしてエンジニアリングと協力してテック企業内で行われます。全体的には、この機能は以下のような事を担当しています。製品固有のコンテンツおよびメッセージ (顧客へのプレゼンテーション、デモ、および使用事例などを含む) の作成。セールスのイネーブリング (ケーススタディの収集などを含む)。そして競争戦略の開発です。しかしながら多くの消費者向け/B2C企業の場合、この機能の作成は後に回される場合があり、その理由としては初期の段階において消費者向け製品によく見られるバイラルな個別成長が挙げられます。しかしこうした企業は提供する製品が多様化するにつれ、この機能を (往々にしてCEO、製品責任者、およびマーケティング責任者を超える形で) 構築し、様々な顧客区分に対する機能と価格設定の更なる一括化を行おうとします。

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CEOにとって「芸術家」か「科学者」、どのマーケティング分野が会社にとって優先されるかを決定することは重要です。なぜならこうした決定はCMOを探す際の重要な情報となるからです。しかしながら初期の段階にあるスタートアップは、実際には目当てとなるCMOを決定する前に、何人もの他のマーケティング担当者を雇ってしまうものです。また初期の段階にある企業にとって、才能あるCMOを引き込むことは難しいことです。なぜなら最も成功しているCMOたちは大変多くの人間に求められる存在であり、また高額の報酬を受け取っているからです。逆の側から考えてみると、多くの成功したCMOはかなりの期間、汗して働いたことがないために、GoogleやFacebookでの広告買い付けの実行といったことに満足してくれることは期待できません。なぜなら彼らは一般的に、以前はそのような事は自分たちのチームに任せていたからです。 従って上記に挙げた機能の中で、あなたが事業の成長に最も影響を与えると考えた物については、あなたが初期の段階で雇うマーケティング担当者が熟達していなければなりません。

そして、もしあなたが一般的な企業を相手にする企業でCMOを雇う場合、彼らが販売責任者と緊密に連携して働くこと、また両者の意見は一致していなければならないことを知っておかねばなりません。もしあなたが消費者向け企業でCMOを雇う場合、彼らは製品責任者と大いにやり取りを行う可能性が高いです。このポジションにいる重役は、会社にふさわしいCMOをあなたが見分けられるよう助けられなければなりませんし、また助けなければなりません。

適切な役割を与えられれば、CMOの役に就いた才能ある者は、会社を形作るだけの潜在力を持つようになります。これを間違うと会社が滅茶苦茶になってしまう可能性があります。なぜならCMOを雇うには大変なお金がかかってしまう上に、不適当な人間をCMOにすることは通常、成長を犠牲にしてしまうため、会社が大きく後退してしまうことになるからです。全てのスタートアップのCEO、特に技術畑の創業者であってCEOの役割に慣れていない者は、この大切な採用で間違いを犯さないために時間と注意を費やすべきです。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Jeff Jordan

Jeff Jordan は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前 OpenTable の CEO であり、会長でした。彼は OpenTable を率い、国内外の成長を加速させ、IPO に導きました。OpenTable の前には、Jeff は PayPal の社長を勤め、オンライン決済のグローバルスタンダードの会社として樹立させることに責任を負っていました。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Hire a CMO (2017)

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